今回は映画『君たちはどう生きるか』の中で、重要なカギを握るアオサギについて見ていきたいと思います。
最初のうちは嘘をついて、主人公・眞人を翻弄する胡散臭い存在でしたが、途中から一緒に夏子捜しをする仲間となり、眞人のピンチを助けるシーンも見られました。
アオサギって敵なのか、味方なのかよく分からないですよね。
そんなアオサギは一体何者なんでしょうか?
鳥の被り物の中身が中年のオジサンなのも気になります。
そこで今回は、アオサギの正体やアオサギの目的や存在する意味についても調べてみました。
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目次
映画『君たちはどう生きるか』アオサギ男の正体は何者?
カヘッカヘッカヘッ pic.twitter.com/uUYHjaNMsX
— スタジオジブリ STUDIO GHIBLI (@JP_GHIBLI) July 13, 2023
アオサギ(サギ男)は何者かと言うと、劇中で主人公の牧眞人と共に夏子捜しの旅をする鳥です。
ケンカを繰り返しながらも、若き日のキリコに出会ったことを機に眞人と和解し、大叔父が暮らす異世界で夏子捜しを続けます。
そんなアオサギの正体は中年の禿げたオジサンです。
中年のオジサンが鳥の被り物をしてる理由は謎のままですが、塔の主から命令されて眞人を異世界へ案内しているところを見ると、現実世界と異世界を行き来できるようです。
何かの術を使ってアオサギに扮しているのでしょうか?
個人的にアオサギの話す言葉が独特で気になったのですが、アオサギはよく…
- 「母君の元へご案内しましょうぞ」
- 「あなたの助けを待っていますぞ」
「〇〇ぞ」みたいな言葉を使うんですよね。
先日、大河ドラマ『どうする家康』を見てたんですよ。
徳川家康が織田信長を打ち取ろうと目論んでいると、家臣が「天下を取りましょうぞ」と言ったんです。
って思いまして。
アオサギの話し方と人物像に何か関係があるのでしょうか?
こちらは追って調べていきたいと思います。
そんなアオサギ(サギ男)はモデルとなる方がいるそうです。
鈴木敏夫さんのラジオ番組での発言によると…
「君たちはどう生きるか」に特徴的なある男が出てくるんですよ、サギ男っつってね。なんかちょっと悪い奴なんですよね。こいつがね、主人公と喧嘩しているわけ。事あるごとに喧嘩するのよ。そしたら、あるお姉さんがね、「ふたりとも仲良くやんな」つって。そんなセリフがあって。だいたい近い人をモデルにしてるでしょ。だいたい僕わかったんですよ。その「ふたりとも仲良くやんな」つったのは、ジブリにずっといた色の職人で保田道世さんという人がいて、この人なんですよね、年は若いけれど」
つまり、よく喧嘩をするということでモデルになったのが、
アオサギ(サギ男)…鈴木敏夫
という2人の巨匠の名前が挙げられるわけです。
「ケンカするけど真の理解者」みたいなイメージで描かれたのかもしれないですね。
アオサギの意味とは?
そもそもアオサギはなぜ存在するんでしょうか?
途中から眞人を異世界に案内して、ケンカをしながらも継母ナツコを探す仲間となりましたよね。
そんなアオサギを登場させた意図が気になります。
アオサギは眞人の鏡のような存在
塔の主に、眞人を下の世界へ案内するよう指示されたアオサギでしたが、始めのうちは眞人から冷たくされていました。
なぜならアオサギは嘘つきでずるいヤツだからです。
アオサギは「眞人の実母は生きてる。迎えに来るのを待っている。」と話して接近してきました。
眞人はそんなの嘘だと分かっていましたが、心のどこかで期待していたのでしょう。
実際は蝋人形で作った母親を見せられるのですが。
眞人はアオサギを「嘘つきでずるいヤツだ」と罵ってましたが、実は眞人自身も嘘つきなのです。
転校先の学校でいじめにあって、学校に行きたくなかった眞人は、道ばたの石で自分の頭を殴り大ケガをして「友達にやられた」と嘘をついてました。
父親がカンカンに怒って学校に殴り込みに行ってましたよね。
年頃の眞人に新しい母親ができて、慣れない環境に変わって知らない友達に囲まれて、複雑な心境だったのは間違いないですが、アオサギはそんな眞人そのものを映しだす存在だったのかもしれないです。
「他人は自分を映す鏡」という言葉があるように、アオサギは眞人の鏡的な存在として目の前に現れている可能性もありそうです。
アオサギの目的は何だった?
映画『君たちはどう生きるか』のアオサギの目的とは、眞人を大叔父の元へ連れていくことです。
空襲で実母を亡くした眞人は、継母ナツコの屋敷で暮らすために田舎へ疎開しました。
眞人が引っ越してくると、まるで待ち受けていたかのように現れたのがアオサギです。
アオサギは「実母は生きていて、迎えに来てくれるのを待っている」と眞人に告げるのです。
しかし、もちろん実母は生きてはおらず、眞人を塔へ連れ出すための口実でした。
アオサギは、塔の主であり異世界を創り出した大叔父の指示によって、眞人を連れてくるために接近していたのです。
大叔父は眞人を自分の後継者とするために、こちらの世界に呼び寄せていたことが分かります。
アオサギはその案内役だったということですね。
アオサギ(サギ男)の登場シーンまとめ
うたた寝してる眞人を見つめるアオサギ
東京から疎開してきた眞人は、夏子の屋敷を案内されました。
自分の部屋に入ると旅の疲れが出たのかうたた寝してしまいます。
すると母の病院が空襲で燃える夢を見てしまい、目が覚めると泣いていました。
目が覚めた眞人は窓に目をやると、アオサギがこちらを見つめていることに気が付きました。
アオサギは初めて眞人に会ったときも自宅の屋根の下に飛んできたりと、いつもとは違う行動をとっていました。
眞人のことを意識している様子。
眞人は外に出てアオサギを追いかけると、屋敷の裏手にある古びた塔へと入っていきました。
入り口は塞がれていて中には入ることはできません。
家政婦が探しに来たので屋敷に戻ると、途中で拾ったアオサギの羽根は消えてしまいました。
母・久子に会わせてくれる?
転校初日 父に車で送迎してもらうと、眞人は裕福過ぎるせいか周囲と馴染めず、帰り道で友人たちと殴り合いのケンカをしてしまいます。
ヤケになった眞人は自らの頭を石で殴り、こめかみにひどい怪我を負いました。
部屋で療養していると、またしても眞人の部屋に姿を見せたアオサギ。
眞人は自分に付きまとうアオサギをやっつけようと、木刀を持って後を追います。
眞人が「お前は何者だ!?ただのアオサギじゃないだろう!?」と問いかけると、「どうやら長い間待ち続けたお方が現れたようだ。いざ母君の元へご案内しましょうぞ」と言います。
母・久子は亡くなったと告げるも、アオサギは「死んじゃあいませんよ。母君はあなたの助けを待っていますぞ」と言いました。
お待ちしております…と言い残し、オオサギはその場から去っていきました。
アオサギが偽物の夏子を見せる
妊娠中の身重の体で行方不明になった夏子を心配して、家政婦たちが捜し回ってました。
眞人は夏子が森の中に入っていくところを目撃したことを思い出し、森へ入っていきます。
するとその先には、アオサギが古びた塔で待ち受けていたのです。
アオサギに「夏子さんを返せ」と叫ぶと、お待ちしておりましたぞ…と、塔の中に眞人を招き入れようとします。
家政婦はこの場所が呪われているので近づいてはいけないと言いますが、塔の主の声は屋敷の血を引く者しか聞こえないため、眞人は自分が行くしかないと使命感に駆られているようです。
危険を冒してまで夏子を助けに行こうとする行動の裏には、「母・久子が生きてる」とアオサギから聞かされて自分の目で確かめたいという気持ちもあるようでした。
アオサギに案内されて塔の中に入ると、椅子に寝そべる母・久子を見つけて驚きます。
眞人は近寄って「かあさん かあさん…」と呼び掛けて肩をさわると、久子はドロドロに溶けて無くなってしまいました。
イスに横たわっていたのは、アオサギが作った偽物の久子だったのです。
なぜこのようなまねをしたのか目的は分かりませんが、アオサギは眞人を陥れたい様子です。
アオサギは怒った眞人に向かって、「矢で心臓を射抜いてみろ…」と挑発すると、眞人が放った矢が弱点のクチバシに命中し、アオサギは飛べなくなってしまいました。
クチバシの中から人間が顔を出すと、なんとアオサギの中身は中年男性だったのです。
そこへお館様が現れて、下の世界へ案内するよう命令されたアオサギは、眞人と共に不思議な世界へ迷い込んだ夏子を助けに行くことになりました。
アオサギと夏子捜しの旅に出る
地面に吸い込まれて辿り着いたのは海に囲まれた島でした。
島へ降り立ち金の門を開けると、そこは墓の門だったようで、眞人はペリカンの群れに襲われてしまいますが、キリコが追い払ってくれました。
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大きなナマズのような魚を釣り上げてキリコが捌いていると、白い妖精”わらわら”がはらわたを吸収していきます。これは滋養をつけるためです。
栄養を摂ったわらわら達は体を膨らませて夜空へと飛んでいきました。
飛んでいったわらわらは、「上の世界で人間として生まれる」とキリコが言いました。
【わらわらの実物画像はこちら】
【わらわらのかわいい画像】名前は方言が由来?正体は何者?
眞人がわらわらが飛ぶ姿を眺めていると、ペリカンがわらわらを食べ始める場面に遭遇。
すると「ヒミ様」と呼ばれる女性が現れてペリカンたちを退治しました。
ここでアオサギと眞人が合流。「夏子はここにはいない。案内しましょうか」と話すと、眞人は自分で捜すから…と断りを入れました。
この眞人の塩対応にはちゃんとした理由があったのです。(後述)
ペリカンの埋葬を手伝ってくれたアオサギに夏子の本当の居場所を訊ねましたが、何も答えようとしません。
眞人が懲らしめようと羽根をちぎろうとすると、本当に羽根がちぎれてしまいました。
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アオサギとの和解…?
キリコが眞人とアオサギを自宅へ連れて帰り、仲直りさせようとします。
しかし、眞人はアオサギが「母親が生きてる」と嘘をついたことを根に持ってます。
嘘つきだから、きっと夏子をさらったのはアオサギに違いない。と信じてやみません。
意地を張り合う2人を見てキリコは、お館様からの命令だから、2人で仲良く夏子さんを捜しておいでよ。と背中を押してくれたのです。
2人ともムスっとしてましたが、これにて雪解けとなるのか…
アオサギが協力者に
その頃、上の世界では眞人の父親や会社の部下たちが、行方不明になった眞人、夏子、キリコを捜し回っていました。
その一方でアオサギと眞人は、下の世界で夏子を捜していると、アオサギはクチバシが矢で射抜かれたので体力が持たない様子。
どうやら穴を開けた人が修復しないと効き目がないそうです。
そこで眞人はアオサギのクチバシを治してあげましたが、クチバシが治った途端、「オレはお前の友達でも仲間でもない」「自分で夏子を捜して助けろ」と吐き捨てます。
…がしかし、まだ完全ではないようで傷口が痛む様子。
そこへインコが通りかかりました。アオサギによるとインコがこの場所にいるのはおかしいようです。
アオサギがインコの気を引いてる間に、眞人が先に進む作戦をとることに。
その作戦は見事成功し、扉を開けると塔の主である大叔父が登場します。
ヒミに夏子の元へ案内してもらうと、そこには白い紙に巻かれて眠る夏子がいました。
なんとヒミの話によると、夏子はヒミの妹であり、ヒミは眞人の母・久子の若かりし頃だと分かったのです。
眞人は夏子と会えましたが、「帰りなさい」「あなたのことは嫌い」と言って突き放そうとします。
「夏子かあさん!」と叫ぶと、ヒミの呪術によって眞人は塔の主の元へ飛ばされたようです。
アオサギと友情が芽生える
眞人が目を覚ますと塔の主の元にいました。
塔の主は眞人に同じ血を引く者として、この世界の平和とバランスを保つために塔の主の役目を引き継いでほしいと話しました。
倒れていた眞人は夏子の産屋へ訪れた罰としてインコに捕まり、包丁でさばかれるところだったのです。
それを間一髪のところでアオサギが助けて、産屋に入ることはこの世界ではタブーだと眞人に教えました。
眞人は再び塔の主の元へたどり着き、上の世界(現実世界)へと戻ることになりました。
眞人が無事に上の世界に戻ってくると、なんと下の世界での記憶がまだ残っていることに気付きました。
アオサギによると、下の世界の出来事は忘れないといけないと言うのです。
眞人はキリコの人形や石を持ってきてしまったようですが、アオサギは「まあ大した力はない。これだから素人は…。そのうち忘れるからそれでもいいか。あばよ友達!」と言って去って行くのでした。
最後に眞人とアオサギとの間には友情が芽生えたってことですね。