『すずめの戸締り』の鍵となる、世間に災いをもたらす後ろ戸を閉める『閉じ師』の職業について見て行きます。
草太が開いた扉を閉めるために呪文を唱えるシーンがあったのですが、もの凄くカッコ良かったですよね!
そこで今回は、閉じ師の呪文全文や意味、閉じ師は実在するのかなどを総まとめで見ていきたいと思います。
- 閉じ師は実在するのか、モデルはあるのか
- 閉じ師の呪文全文と意味
- 閉じ師の仕事内容
- 閉じ師の年収(給料)はいくらなのか
- 閉じ師の歴史について
これらについてまとめました。
目次
【すずめの戸締り】閉じ師とは実在する?モデルは?
すずめの戸締り観てきたんだけどこの草太というキャラがずっとフェミニンな雰囲気を漂わせていました pic.twitter.com/BTC6Ok4P4G
— 羅 (@lagrttwxy) November 13, 2022
現時点では、新海誠監督は閉じ師のモデルについては明かしていません。
しかしイメージとしては、11月13日の109シネマズ二子玉川の新海誠監督によるティーチイン舞台挨拶によると、「閉じ師は裏天皇のような役割と考えている」と語っておられました。
「天皇は、表では”被災地などを慰問して祈る”という役目を担っておられますが、その裏で 祈りの仕事を具体的にこなして国を支える”裏天皇”のような存在があってもいいのではないか。そのイメージを”閉じ師”として表現しました。」
引用:109シネマズ二子玉川 ティーチイン舞台挨拶
閉じ師は、実務的な祈りをおこなう人物のイメージでしょうか。
かつて閉じ師として活躍した祖父の宗像羊明については、裏天皇の品格と威厳を表現するために、歌舞伎界で貫録のある松本白鸚さんにお願いしたとのことでした。
「裏天皇」とは、実に興味深い言葉でしたが、この話を聞く限りだと閉じ師は何か元ネタがあるわけでも、モデルの存在があるわけでもないようですね。
では過去に閉じ師と同じような仕事はあったのか昔話を探してみたところ、
『すずめの戸締り』の冒頭の廃ホテルで、閉じ師の草太がミミズが飛び出してきた扉の戸締りをするために呪文を唱えるシーンが流れたときに、陰陽師の安倍晴明が似てると思いました。
このあと18:30からBS朝日で映画「陰陽師」 放送するよ~~~!!!ガチすぎる野村萬斎さんの安倍清明が見られるよ~~~~!!!!美しや~~~~~ pic.twitter.com/gMr5y03ln0
— 4415(生存) (@kurumi4415) November 13, 2017
安倍晴明とは、平安時代に怨霊退治、厄払い、祈祷、占い全般を仕事にしていた人です。
呪術の腕前が認められて、多くの貴族から信頼を得ていた陰陽師界隈では有名な人物でした。
人にかけられた呪をおさめるために呪文を唱えて術を解いたり、呪によって悪化した事態の鎮静化をはかっていました。
安倍晴明は一般人には見えない「鬼」が見えたそうで、呪文によって怨霊を封じる姿が、閉じ師の草太に似ていると感じたのです。
草太は閉じ師にしか見えないミミズと戦い、呪文を唱えてその土地を神様にお返ししていました。
- 人に見えない鬼や怨霊が見えた
- 呪文を唱えて呪を封じ込めた
《宗像草太》
- 閉じ師にしか見えないミミズや常世が見える
- 呪文を唱えて扉を戸締りする
宗像草太と安倍晴明は ”呪文で悪い物を封じる” という点が似ているように思いました。
閉じ師そのものは実在しなかったようですが、呪文で悪を封じる仕事は平安時代に実在していたんですね。
閉じ師の呪文(祝詞)の全文内容と意味のまとめ
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「謹んで #お返し申す!」✨🗝️
\\映画『#すずめの戸締まり』
草太の「#戸締まり」シーン
新規映像を公開!!🎬いよいよ公開まで
1時間を切りました!⌛️#新海誠 監督集大成にして
最高傑作の本作ぜひ劇場でご堪能ください!🪑#新海誠 #原菜乃華 #明日公開 pic.twitter.com/0vKUEJynH9
— 映画『すずめの戸締まり』公式 (@suzume_tojimari) November 10, 2022
閉じ師の草太が、後ろ戸の戸締りをするときに唱えた呪文(祝詞)はこちらです。
久しく拝領つかまつったこの山河(やまかわ)、かしこみかしこみ謹んでお返し申す
この長文の呪文ですが、まったく聞いたことのない聞き慣れない呪文ですよね。
登場したばかりの謎多きイケメンの草太が、ミミズと戦いながら唱えた呪文はなかなかカッコいい響きでした。
声の良さだけでなく、呪文の唱え方にも深みがあって、思わずTwitterの動画を繰り返し再生しちゃいますよね。日本語の美しい響きが耳に残ります。
さて物語の呪文ですが、草太が神を鎮めるために唱えたものでした。
呪文をそれぞれ現代語訳していくと…
『かけましくもかしこき』は、「声に出して言うのも畏れ多い」という意味で、祝詞の始めに出てくる言葉です。
『日見不の神』の「ヒミズ」は、ミミズの天敵である「モグラ」を意味しています。モグラはミミズ、昆虫、クモ、ムカデなどの土壌動物を食べるため、ミミズを鎮めるようお願いしていることが分かります。
『遠つ 御祖』は 遠い親や先祖の尊敬語になり、『産土』は 産まれた土地の守り神をウブスナ神と言います。
『久しく』は長い時間が経っていること、『拝領つかまつった』貴人から物をいただくこと。
『かしこみかしこみ』は、神様に対する畏れ多く、慎みを持った表現のことです。
『つつしんで』は、敬意を表してうやうやしく物事をするさまで、かしこまって。という意味を持つ敬語表現です。
以上を踏まえて、呪文を現代語訳すると以下のような意味になります。
先祖代々の土地の守り神よ
長い間 頂いていた山と河を
畏れ多くも謹んでお返しいたします。
後ろ戸が開いた土地を、その土地の神様にお返しする祝詞のようですね。
TOHOシネマズ池袋での新海誠監督によるティーチイン舞台挨拶でも、呪文の意味を一部紹介されていました。
「お返し申す」…久しく人間がお借りしていた土地を自然にお返しします。かつて人がいた場所がなくなる時、土地を悼み、返すのが閉じ師の仕事。という意味が込められています。
引用:TOHOシネマズ池袋 ティーチイン舞台挨拶より
すずめの「行ってきます」は、「土地を返して別の場所に行ってきます。」という意味があるとのことでした。
閉じ師の仕事内容は?人柱になる役目も?
閉じ師の仕事は、後ろ戸からミミズが出てきて災害が起きないように、全国各地の開いてしまった扉に鍵をかける仕事です。
人がいなくなった場所には、「後ろ戸」と呼ばれる扉が開くことがあります。
人を脅かす災害や疫病は、後ろ戸を通って常世から現世にもたらされるのです。
このように後ろ戸からは善くないものが出てくるので、鍵を閉めてその土地を本来の持ち主である産土(土地の守り神)に返すという一連の仕事を草太が担っています。
全国の廃墟をまわって開いた扉を閉めるというシンプルな仕事ではありますが、もし扉を見つけるのが遅れたらミミズが飛び出してくるので危険です。
災いをもたらすミミズは山一帯を覆うような巨大な生物です。
強靭な体力と呪文を駆使してミミズをおさめることができますが、体を張った危険を伴う仕事でもあります。
戸を閉めることで、その土地そのものを本来の持ち主である土地の神様に返して鎮めますが、数百年に一度あるような巨大災害は後ろ戸だけでは抑えきれません。
そんな時のために、日本には古くから東西の二本の要石が与えられているんですね。
草太が要石になったときに、宗像羊朗の「草太はこれから何十年もかけ、神を宿した要石になっていく」という発言がありました。
まるで過去にも要石が人間だった事例を知ってる様子でしたよね。
羊朗のセリフから推測すると、かつて閉じ師には扉を閉める役割だけでなく、自分自身を柱にする”人柱”としての役割もあったのかなと思います。
要石としての使命に加えて、自身が神格化されていくのではないかと。
草太は大学に通って教師を目指しながらも、いつかは家業で殉じるかもしれないと自分の死を意識していかもしれないですね。
国民の命を守っているのに、誰からも認知されないので悲しい職業でもありますね。
【すずめの戸締り】閉じ師の年収や給料はいくら?
宗像家の家業として代々受け継がれている閉じ師の仕事ですが、一体どれくらいの給料が出るんでしょうか?
仕事内容は、全国の開いてしまった後ろ戸を探して戸締りをする仕事。
大学生の合間にやれると良いですが、草太は教職員採用試験前にも宮崎県に遠征していたので、副業的な気軽さは無さそうですよね。
後ろ戸を探しているうちに、映画のようにミミズが飛び出してくるかもしれなので、常に緊張感を持たないとけません。
それに大学に行ってる間にミミズが出てきたら、急遽戸締りしに行かないといけないので学業に専念できず、プライベートの時間も生きた心地がしなさそうです。
震災が起きると人命に関わって億を超える被害が出そうなだけに、命がけで阻止しないといけません。
全国津々浦々を旅してまわるため、旅費や宿泊費を含めて閉じ師に専念できるくらいの給料は欲しいものですが。
戸締りの報酬額ですが、閉じ師の継承が途絶えかけている背景からすると、もしかしたら報酬額は安いかもしれないと思いました。
もしくは給料や報酬なんてものは無いのかもしれないです。
そもそも一般人にはミミズが見えないので、閉じ師の仕事は世間から認知されていない可能性が高いです。
そうなると閉じ師の会社から報酬を得るというよりは、閉じ師の仕事に理解のある一部の支援者から活動資金を支給してもらっているような気がします。
でも閉じ師の継承が途絶えかけているので、戦後の時代背景によって資金源も失われた可能性がありそうですよね。
閉じ師そのものが減ったことによって継承されなくなって、残ったのは宗像家だけ(?)になったのかもしれません。
それを踏まえた現実的な報酬額は以下のようなイメージです。
戸締りをした分だけ報酬が支払われる”完全歩合制”の給料ではないかと予想しました。
《1ヶ月に1回 戸締りした場合》
- 戸締り1件につき…5万円
- 危険手当…10万円
- 旅費交通費…10万円(実質額を支給)
草太は大学生でまだ閉じ師歴も浅そうなので、駆け出しの閉じ師だと単価が安そうです。
必要最低限のお金がもらえるイメージで、ミミズが出てくると危険が伴うので、危険手当として月額別途10万円を支給。みたいな配慮もあるのかな…?
戸締りだけの単純な報酬額は、月1回戸締りをしたら15万円で、月3回戸締りしたら25万円。
これに実質かかった旅費交通費をプラスしてもらえるみたいなイメージです。
月3回戸締りすると年収は300万円になります。安すぎですかね??
でもこの額面は、2021年の大卒初年度の男性の平均年収226万円より高い金額です。(参考:『厚生労働省』令和2年賃金構造基本統計調査)
閉じ師は月に何回戸締りできるか分からないので、本業にするには不安定かもしれません。
明日の命も危ぶまれるような仕事なのに収入が少ないので、草太は手に職を付けようとしていたのかも?
同じような職種がなく、参考にできる資料も無かったので、好き勝手に書きましたが、命がけで戸締りするならもっと給料は高くないと割に合いませんよね。
国民の命を守る責任の重い仕事でもあるので、年収1,000万円以上もらえればやる気も出るかも!
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閉じ師の歴史は江戸時代天明の浅間山噴火がモデルになってる?
椅子になった草太とすずめが後ろ戸の場所の手がかりをつかむために、東京の自宅アパートに訪れていましたね。
手にした『閉ジ師秘伝ノ抄』という古い和装本は、閉じ師の今までの歴史が描かれていました。
本に描かれた絵はまるで歴史の教科書に出てくるような江戸時代の本のようでした。
閉じ師の本には龍の絵図が描かれています。
蛇行する長い体の隙間に山や集落や湖が描かれて、龍と土地は一体であるかのような印象を受けます。
その端と端、頭と尾のそれぞれに巨大な剣のようなものが刺さっていました。
これは要石(かなめいし)を表しており、西の柱と東の柱になります。
本には見開きいっぱいに噴火の絵が描かれており、黒い墨で集落と山が描かれていて、山から噴き出す炎が真っ赤な染料で描かれていました。
ぐねぐねとうねる空の大河のようなその赤さは、まさにすずめが宮﨑の廃ホテルで目撃した赤いミミズと同じでした。
炎は噴火口からではなく、山の山頂にある鳥居から噴き出しています。
絵の端には「天明三年」と記されていました。
天明とは江戸時代後期の年号です。
天明3年(1783年)は、東北地方で冷害が続いた影響で農作物の出来高が悪く、「天明の大飢饉」と呼ばれる日本の大飢饉が起こった時代です。
そして天明3年3月に岩木山が、7月には浅間山が噴火して、火山灰が陽光が遮られたことにより、冷害が悪化して数万人が餓死したのです。
「閉ジ師秘伝ノ抄」にはもしかしたら、この浅間山の噴火が描かれていたのかもしれません。
さらに原作小説によると、「100年前に関東一帯に大きな災害を起こして、当時の閉じ師たちによって後ろ戸が閉められました。」と書かれているのですが、『すずめの戸締り』の時代背景は2023年9月の話です。
関東大震災が起きたのは1923年9月の頃で、首都圏をM7.9の巨大地震が襲い広範囲に被害が発生しました。
100年前の大きな災害とは、まさに関東大震災の話ですね。
関東大震災と言えば、ジブリ映画『風立ちぬ』で主人公・堀越二郎と菜穂子が出会ったのも関東大震災の真っ最中のことでした。
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各地で震災による火災が起きるシーンは印象深いものでしたね。
100年前の関東大震災の頃は、閉じ師も政権が協力していたような規模でしたが、現在は草太が全国を飛び回っているところを見る限りワンマンになっているようです。
歴史を経るなかで継承が途絶えているのが分かります。
草太が誰かに閉じ師の仕事を伝えきれなかったら、閉じ師が不在になっちゃいますよね。
閉じ師の今後についても気になります。